木工から漆塗りまでの全工程を一人で一貫して手がける木工作家・蝶野秀紀さん。分業が一般的な漆器の世界にあって、すべての作業に自ら向き合うことで、量産品にはない独特の表情と手に馴染むフォルムを生み出しています。
代表作である「和紙貼」の作品は、薄く削り出した木地に和紙を丁寧に纏わせ、そこへ幾重にも漆を深く染み込ませて作られます。和紙ならではの優しい繊維のテクスチャーと、漆が持つ柔らかで深みのある光沢が重なり合い、通常の漆器とは一線を画す落ち着いた皮膚を作品に与えています。
「手に取った人に少しでも幸せな気持ちになってもらえるものを」という想いのもと、奇抜さを削ぎ落とし、日常の道具としての使いやすさを徹底して追求する蝶野さん。陶磁器やガラスなど異なる素材とも見事に調和し、食卓の影の主役として長年寄り添い続ける温もりのある作品です。
<略歴 / PROFILE>
蝶野秀紀 / Hideki Chono
1971年 京都府生まれ
2001年 石川県挽物轆轤技術研修所 入学
2005年 同研修所卒業、石川県山中にて「工房 息吹木」設立
2009年 広島県に工房を移転