菊地亨
均質さと滑らかさに覆われた現代において、手仕事が刻む時間とは何か。
陶芸家・菊地亨さんの作陶は、正確に量り取られた一定の「土の質量」と静かに対峙することから始まります。
ろくろの上で一度芯を出したのち、手が記憶する無意識の慣性——「手くせ」を自覚的に裏切り、歪みを与える往復運動を重ねていきます。
予定調和の輪郭を拒むそのプロセスは、土と身体の間に微かな摩擦を生み、うつわの確かな形質として立ち現れます。
装飾を削ぎ落とした乾いた土の肌合いは、素材そのものの美しさをそのまま宿しています。
原初的な佇まいを湛えながらも、そこには緻密に計算された幾何学と、日常の道具としての静寂な理知が同居しています。
無意識と意識のあわいにあらわれる、ひとつとして同じもののない造形。
土に刻まれた遥かなる時間の運動を、ぜひ手に取ってお確かめください。